小泉純一郎首相は7日、東京・九段会館で開かれた政府など主催の「北方領土
返還要求全国大会」を欠席した。衆院予算委員会での答弁準備を優先させたと
いう。昭和56年の大会発足以来、首相欠席は今回で4回目。小泉首相は昨年
も風邪のため欠席、山崎正昭官房副長官が首相あいさつを代読したが、今回は
代読も見送り「極めて異例」の大会となった。ロシアのプーチン大統領が北方
領土支配の正当性を主張するなど対日強硬路線を強めているだけに、ジャーナ
リストの櫻井よしこ氏が大会に先立つ討論会で「非常に誤った政治的メッセー
ジをロシアに与える。日本政府の領土問題に対する姿勢が甘くみられる」と指
摘するなど、大会出席者からは批判や落胆の声が噴出した。

 

北方領土が不当にロシアに占領されている中で、ここまで続けてきた地道な運
動も国民世論を動かすには至らず、欧州を中心に資源外交を展開し、かつてな
い好況にわくロシアが敢えて北方領土を我が国に返還するのは現実問題として
難しい。かつてはソ連の崩壊のために混乱するロシアが、我が国の経済援助と
バーターで返還の動きを見せたのだが、橋本元首相と信頼関係を築いたエリツ
ィン大統領の退陣や当の橋本元首相参院選の敗北から退陣と、一気に流れが
変わってしまったのが残念でならない。戦後60年が過ぎ、火事場泥棒の如く
北方領土を奪い取られたのが未だに続く不条理さに怒りを覚える。

 

高齢化が進む旧島民が誰にも気兼ねせず、かつての「故郷」の土を踏むことが
出来るのはいつになるのだろうか。今回の小泉首相の欠席にしても、結局のと
ころ北方領土に関心がないのだと自らアピールしてしまったに等しい。国会な
ど放っておいても、むしろこちらの大会に出席した方が野党としても、追求は
しないであろうし、追求すれば墓穴を掘るだけであろう。力のいれどころを誤
れば我が国の領土問題は、他にも飛び火しかねないのだ。