埼玉県川口市の飲食店員田口八重子さんが北朝鮮に拉致されてから30年
となった29日、同市内で「拉致問題を考える川口市民の会」が開かれた。
田口さんの兄で、拉致被害者家族会代表の飯塚繁雄さんは、北朝鮮のテロ
支援国家指定解除問題に触れ、「私たち家族は直接何もできない。政府が
国の責任と意気込みを持って対応してほしい。『帰してください』ではな
く『帰せ』ということだ」と強調。田口さんとの思い出を語るうちに、涙
ぐむ場面もあった。また、拉致問題にも積極的に取り組んできた上田清司
同県知事も「アメリカのテロ支援国解除については大変不満。単独で強力
な圧力を加えていかなくてはならないことを肝に銘じるべきだ」と訴えた。 

 

ごく普通の生活をしていた人々が、北朝鮮に拉致されたと言う恐るべき事
実が世間に知られるようになってから、どれほどの時間が経ったのであろ
うか。小泉元首相の訪朝によって、北朝鮮が公式に拉致があったことを認
めたのが2002年、帰国した拉致被害者もいれば、一方的に死亡したと
の通告で済まされた拉致被害者もいた。その死亡したとされる被害者の中
田口八重子さんもいたわけだが、同じく拉致された原敕晁さんと結婚し、
原さんを亡くした後に、慰労のため山に行って休息をとった後の帰宅途中、
馬息嶺で軍部隊の車と衝突して死亡との説明がなされた。これらの説明も
二転三転しており、まったくもって信頼出来るものではなかった。拉致被
害者の家族にとっては、あまりに長い時間が浪費されてしまっている。だ
が、現実には北朝鮮拉致問題に真剣に向き合おうとはせず、米朝関係改
善に力を注いでいる。拉致問題が置き去りにされていることについて、政
府はどのような対応を取っていくのか説明する責任があるだろう。