麻生太郎首相の訪中で日中両国首脳は「戦略的互恵関係」深化のアピール
に腐心した。だが歴史認識問題で温家宝首相が日本に強くクギをさすなど、
友好ムード一色からは遠い現実も浮かび上がった。麻生首相は中国に核軍
縮への協力を促したが、中国側の回答は「核兵器の全面禁止を唱えている」
と、従来通りだった。「歴史問題は非常に敏感であり、靖国問題は特に国
民感情にかかわる。適切に処理してほしい」。温首相は29日の会談で、
麻生首相靖国神社に真榊を奉納したことを念頭に、最近では珍しく「靖
国」に言及した。胡錦濤国家主席も30日の会談で「歴史問題は適切に処
理し、戦略的互恵関係を発展させることが大事だ」と強調した。

 

ここ最近は取り上げてこなかった歴史問題を敢えて日中首脳会談で取り上
げたのは、今年で建国60周年を迎えることも少なからず影響しているだ
ろう。小泉元首相が在任中は極端に冷え込んだ日中関係だったが、その後
の安倍政権、福田政権では関係が改善され、そのまま麻生首相に引き継が
れた。戦略的互恵関係と言う、中身があるようでないような、そんな関係
を深化させていくことを目指しているようだが、中国が我が国との関係を
どう捉えているのか。その辺を考えないまま、友好一本で進めていくのは
疑問が残る。例えば中国海軍は空母建造を目指しており、どう考えても外
征型の艦隊編成を目指しているはずだ。また、歴史問題と言う対日カード
は今後も切ってくることであろう。麻生首相は油断することなく中国と対
話して欲しい。