広島は6日、60回目の原爆忌を迎えた。広島市中区平和記念公園で午前8
時から開かれた平和記念式典(原爆死没者慰霊式・平和祈念式)には、内外の
被爆者や遺族代表、小泉首相、市民ら約5万5000人が参列、原爆犠牲者へ
の鎮魂の祈りと、いまだ実現できない核兵器廃絶への願いが会場を包んだ。被
爆から60年。体験継承に残された時間は限られている。秋葉忠利市長は平和
宣言で、来年の長崎原爆忌(8月9日)までを「継承と目覚め、決意の年」と
し、ヒロシマの原点に立ち返って、核兵器廃絶と世界平和実現のため、ひたす
ら努力し続けた被爆者の志を受け継ぐことを表明した。

 

核兵器廃絶の道は被爆者達の願いとは裏腹に、ますます困難なものとなり混迷
を極めている。皮肉にも冷戦の崩壊は、核兵器の拡散と言う時代へと変わり、
保有国は減るどころか増えてしまった。核抑止力を信奉することで、他国か
らの攻撃を防ごうと足掻き続ける愚かな国家もあれば、自ら核拡散の原動力と
なった国家もある。自ら武器を完全に捨て去ることは、相手を信頼出来ること
があくまで前提であり、それは赤子でない限り完全に人に己の生命を委ねるこ
とは事実上不可能なことであろう。

 

国家・人が核兵器保有している以上、核兵器廃絶ではなく核兵器を徐々に削
減していくことの方が現実的である。捨て去ることは出来ないかもしれないが、
それと同時に新たな核保有国の誕生だけは、阻止せねばならないだろう。唯一
被爆国として我が国がリーダーシップを発揮したいところであるが、やはり
持てる国が主導しないことには説得力に欠けるのも事実である。だが、被爆
言う体験は、世界に語り継ぐ「義務」であろう。一瞬にして街を破壊しつくし
人を殺しつくした兵器を忘れてはならない。