東京都杉並区の教育委員会は12日、区立中学校23校で来年度から使う歴史
教科書に「新しい歴史教科書をつくる会」主導で編集された扶桑社版を採択し
た。都内の市区町村教委が同社版を採択するのは初めて。同区では賛否両派の
運動が起き、委員の賛否が分かれる中、この日も約850人が傍聴を希望する
など、結論が注目されていた。委員会は公開で行われ、納冨善朗教育長を含む
委員3人が同社版を推した。

 

夏休み期間だから、と言うわけでもなく全国から応援にかけつけた反対派が杉
並区に集結したようだが、公開で行われた委員会は周囲の雑音に惑わされるこ
ともなく扶桑社版の歴史教科書を採択した。まずは大きなトラブルもなく採択
が行われたことで、ほっと一安心と言ったところである。反対派の活動家だけ
でなく、扶桑社教科書を支持する人たちや「2ちゃんねる」の呼びかけで集ま
ったグループが詰めかけ、騒然とした雰囲気の中で審議をするのは本当に苦労
したことであろう。

 

議論では賛成の委員が「日本の過去を暗いイメージだけで書くのは子どもに夢
を与えない。扶桑社版には戦時中に外国から感謝された日本人もいたことが書
かれている」などと評価。反対の委員は「(太平洋戦争について)扶桑社版は
『日本の将兵は敢闘精神を発揮してよく戦った』などと書き、戦争に向かう教
科書ではないかと不安を持った」と懸念を示した。

 

教科書を使うのは他でもない子供達である。それを選ぶのが大人達である以上
理性を持って採択をせねばならない。それを示したのが杉並区の採択であった。