米国の国防大学と大手研究機関のAEIが共催した「アジアにおける中国」と
いうタイトルのセミナーでパネリストとして意見を発表した外交評議会の上級
研究員、エドワード・リンカーン氏は「東アジア共同体」への障壁の一つとし
日中関係の悪化を挙げ、原因について「ほとんどが日本側によって取られた
挑発行為による」と述べた。リンカーン氏は挑発の実例として、「小泉首相
靖国神社参拝と右翼の歴史教科書の採択」を挙げ、ここ一年半ほど日本側が中
国側に明確に反論をするようになったことが、「中国を悪者にする言辞」だと
指摘した。

 

質疑応答で、「中国側の潜水艦の日本領海侵入東シナ海の紛争海域でのガス
田の一方的開発、日本大使館などを破壊した反日暴力デモなどは挑発ではない
のか」という質問に対し、同氏は「潜水艦の領海侵入を日本政府は公表すべき
でなかった」と述べ、情報公表が中国への挑発となったという見解を示した。
どこかで見たような構図ではないか。日本=悪、中国=善と言う極端なまでに
二極化させた構図は、ひたすら我が国に非があると決め付けており、さらに強
引なまでの中国の持ち上げぶりは、かつて左翼勢力が掲げていた中国・ソ連
どの社会主義国は楽園だ、との虚妄に通じるものがある。

 

さらに氏は中国のガス田開発にも日本側はもっと控えめな態度で応じるべきだ
と述べ、反日暴力デモについては、「中国が自国への挑発とみなす外国の行動
にはあの種のデモで対応することはすでに分かっていたのだから、日本側はデ
モの前からもっと和解的な態度をみせるべきだった」と答え、日中関係の悪化
や摩擦は事実上、みな日本側の「挑発」に原因があるとする見方を繰り返して
いる。要は中国にひたすら譲歩していろ、と言いたいらしい。領海侵入や境界
を争っているガス田開発にしても、自国の権益を侵すものであり放っておいて
済む問題ではないのは、誰の目にも明らかであろう。あきれてモノが言えない
とは正にこのことだ。