耐震強度偽装問題で、姉歯秀次1級建築士の構造計算書を再検証、データ偽造
を見破った「アトラス設計」(東京都渋谷区)の渡辺朋幸社長が2日、記者会
見し、建築確認した検査機関以外に、仲介したコンサルタント会社「総合経営
研究所」「平成設計」「木村建設」にも通告していたことを明らかにした。渡
辺社長によると、アトラス設計は昨年1月、横浜市の設計会社から頼まれ、姉
歯氏の構造計算を検証。図面上のオフィスビルの設計が、耐震基準の4分の1
程度しか満たしていないことに気付いた。同社長は同年2月24日、横浜市
設計会社社長とともに姉歯氏を呼び、「何でこんなことをするのか」とただし
た。同氏は「外注に任せていた。間違っていたので訂正する」とびくびくしな
がら答えたという。

 

次々と役者が登場してくるものだ。さながら映画やドラマを見ているかのよう
なものだが、これが現実で被害者が多数出ているだけに洒落にはなっていない。
姉歯建築士に始まり、ずさんな検査機関の審査、施工主からの圧力、国会での
フューザー社長の大立ち回りと誰が見ても異常な業界であると認識するであろ
う。誰もが責任を逃げようとする中、引導する役目として登場したのが、この
アトラス設計の渡辺社長と言ったところか。巧妙に偽造されたと各検査機関が
言う中、偽造を簡単に見破り姉歯氏を問い詰めてまでいる。こうなると本当に
見破れなかったのかと疑念の目が向けられても仕方あるまい。

 

耐震基準の4分の1程度しか満たしていない建物など存在してはいけなかった
はずだが、偽造が見逃され多くのマンションが建てられてしまった。姉歯氏が
手掛けた物件には気をつけろとの忠告も、コスト重視の中で置いてけぼりにさ
れた。「もし」がないにせよ、これの忠告が受け入れられていれば、これだけ
の被害者を生むことは無かったはずだ。隠蔽に隠蔽を重ねて、結果的により多
くの罪を生むことになった負の連鎖の解明はまだ終わりそうに無い。