耐震データ偽造問題で、震度5強で倒壊の恐れのあるマンション7棟の建築主
ヒューザー」が、入居者に「買い戻し案」の詳細を説明する文書を送ってい
たことが分かった。同社は「風評被害で資金調達が望めない」と資金繰りの悪
化を強調。新たな資金調達先としてファンドから出資を求めるなどの内容だ。
法律家は「実現性に乏しく、住民をさらに混乱させるだけ」と厳しく批判して
いる。文書はA4判2枚で、12月1日付。東京都墨田区の「グランドステー
東向島」などの住民に宅配便やファクスで送られた。それによると、「風評
被害や信用力の失墜で通常の資金調達は望めない」として、マンションに耐震
や免震の補修を施して資産価値を高めた上で、ファンドから資金を募り、入居
者への返金や慰謝料を支払うとなっている。また、物件をファンドに売却し資
金を得る可能性にも触れている。

 

入居者のローン債務を金融機関に放棄してもらうよう、公的機関の指導を求め
ている部分もある。「協力を得られない場合は当社の経営継続は困難になる」
と倒産の可能性にも言及。また「エクイティ」「重畳的」など一般になじみの
薄い用語を多用し、分かりづらい文章になっている。ついに来るところまで来
たと言った感じのフューザーの対応であるが、当初の買い戻し案とは次第に乖
離していく中で、住民の怒りはつのるばかりであろう。まるで倒産をさせたく
なくば協力しろと言わんばかりの一方的な文書に、モラルのかけらも感じられ
ないだけでなく、本当に誠心誠意対応しているのかと突き上げをくらっても仕
方はなさそうである。

 

この文書に対してマンション問題に詳しい弁護士は「倒産しそうと自ら言って
いる企業に投資するファンドがあるのか」と首をかしげ、「問題のマンション
を建て替えずに補修で済むのかさえ疑問で、銀行のローン放棄などまずあり得
ない」とあきれ返る。住民も「自らの責任で事態を招いたのに、風評被害とは
なんだ。難しい文章で、あり得ないような内容をこねくり回している」と憤る。
姉歯氏に騙されたのだと小嶋社長は言いたいのかもしれないが、売り手である
フューザーに瑕疵担保責任がある以上、責任を果たすのは当然である。今はど
うすべきか再考を願う。