天皇陛下は23日、72歳の誕生日を迎えられた。これに先立つ記者会見で、
戦後60年でのサイパン島慰霊訪問などに関して、「過去の歴史をその後の時
代とともに正しく理解しようと努めることは、日本人自身にとっても日本人が
世界の人々と交わっていくうえにも極めて大切」との考えを示した。会見は皇
居・宮殿で19日行われ、冒頭で豪雪被害に触れ、遺族への哀悼とともに「速
やかに天候が好転し、人々が穏やかな生活に戻れるよう願っています」と述べ
た。「女性・女系天皇」容認を打ち出した「皇室典範に関する有識者会議」の
結論には、「回答は控えたい」と言及しなかった。しかし、皇室のあり方につ
いて「国民と苦楽をともにすることに努め、国民の幸せを願いつつ、務めを果
たしていくこと」との見解を示した。

 

昭和と言う激動の時代を経て平成の御世に、天皇陛下は我が国の象徴として超
然たる姿勢をもって国民の幸せを真摯に願っておられる。過去の歴史を正しく
理解しようと努めることが極めて大切とのお考えも、右傾化しているとされる
最近の世相をやんわりとたしなめたのであろう。これは歴史を改竄することな
く、受け入れようとの意味も含んでおられるはずだが、これを都合良く解釈し
小泉首相靖国神社の参拝や歴史教科書問題に代表されるようなことを陛下が
批判されていると政治に利用する勢力が出てこないとも限らない。正に不敬で
ある、そのような勢力こそ歴史の改竄を平気で行い、時には「外圧」を利用と
してまで御注進を行ってきたものだ。

 

さらに陛下は、11月に結婚し皇族を離れた長女の黒田清子さんに関しては「
皇后はさぞ寂しく感じていることと思います」としたうえで、「これまでおか
しいことで3人が笑う時、ひときわ大きく笑っていた人がいなくなったことを
2人で話し合っています」と明かし、一人の父親としての姿をお見せになられ
ている。陛下としても皇室典範の改正は気にならざるを得ないはずだが、あく
まで政治のことは政治、そのように距離を取らざるを得ないのもまた事実なの
だ。それを察するのが有識者会議の役目であろう、決して早急な結論など国民
も求めては居ない。