昨年5月に自殺した中国の在上海日本総領事館の男性館員が、中国側から外交
機密に関する情報提供を強要されたとする遺書を残した問題について、鹿取克
章外務報道官は28日の記者会見で、「中国側公安当局者により、ウィーン条
約上の義務に反する遺憾な行為があった」と発表した。外務省は自殺直後から
複数回、中国政府に抗議し、事実関係の究明を求めたが、中国側からの回答が
ない状態が続いている。外務省はこれまで、館員の死亡は認めていたが、「遺
族の意向があり、詳細は話せない」としていた。だが、館員自殺に関する報道
を受け、改めて遺族に相談し、了解を得て発表した。鹿取報道官は中国側の
「遺憾な行為」の内容を明らかにしなかったが、「(受け入れ国は)領事官の
身体、自由、尊厳に対するいかなる侵害も防止するため、すべての措置をとる」
とするウィーン条約に中国側が違反したと指摘し、情報提供の強要が事実だと
の考えを示唆した。

 

これに対し当然のことだが、中国外務省は定例会見などで、「日本側の報道は
根拠がなく、事実とは合致しない」と反論している。自らのスパイ行為を明白
な証拠無しに認める馬鹿はいるまい、第一報道されて明らかになったのではあ
まりに対応としてはまずいのではないか。何の意味があるのか知らないが、首
相官邸は外務省に対し、在外公館などで機密情報が漏れないよう、情報管理体
制の強化を指示した。外務省は本省職員や在外公館の館員らに、情報管理や私
生活上の注意を改めて徹底する方針とのことだ。そんなことは言われなくても
やらなくてはならない、当然の義務ではなかったのか。身を固めた上でも入り
込んでくる連中こそ、最も警戒すべき相手であろう。もともと国際条約をさし
て遵守するつもりもない中国にとって、事件が露見しようがしまいが知らぬ存
ぜぬを押し通して、事態を収束させてしまうはずだ。

 

国家機密を知る立場にある人間の脇が甘くては、機密が機密で無くなってしま
う。かつての大東亜戦争のように、暗号が解読されていた事実を挙げるまでも
なく、外交の世界もあらゆる権謀術数が駆使される決して綺麗な世界ではない
のだ。外交努力外交努力と叫ぶ勢力がいるが、そういった勢力の頼みとする外
交とはかくも汚いことが行われているのだと、認識させたのであればこの館員
の死も無駄にはなるまい。