韓国ソウル大の黄禹錫教授による胚性幹細胞(ES細胞)研究疑惑問題について、
ローマ法王庁生命アカデミー委員長のスグレシア司教は、「韓国社会が生命倫理
に反して、利益を追求することは危険なこと。ES細胞を得るために人間の胚を
破壊する特権を『科学の権利』と言えるのか」と述べ、研究の過熱ぶりを批判し
た。さらに韓国ソウル大学の調査委員会は29日、黄禹錫ソウル大教授が率いる
研究チームがES細胞を作成したことを証明できるデータは存在しないとの調査
結果を発表した。

 

韓国でノーベル賞に最も近いとされた黄禹錫教授であったが、ES細胞の研究疑
惑が徐々に明らかになるにつれて、彼を国民的英雄として扱った韓国内も夢から
覚めていくことであろう。韓国政府は黄禹錫教授がES細胞の「作成成功」を受
けて今年十月、ES細胞を作成し研究者に有償で提供する「世界幹細胞ハブ(研
究センター)」を設立したが、これも文字通り何の意味も無い施設となってしま
ったわけである。バイオ分野での遅れを取り戻そうと、政府も惜しみない援助を
続けた結果が、世界初の快挙の成果が一転して嘘で塗り固められたものであった
と強烈に思い知らされるという「悪夢」が待っていた。

 

ローマ法王庁生命倫理に反するとの見解を出しているが、カトリック教会など
韓国の宗教界は、研究を支持する熱気に押されて問題を提起しておらず、とにか
く「世界初の快挙」であるとか「ノーベル賞の獲得」という目的のために国内が
異常とも言える熱狂に包まれるのが韓国なのだ。はじめに疑惑を報道したMBC
に反発が集中し、「国益に反する報道」との世論が沸騰し、この問題を報じた番
組のスポンサー企業がすべて降りる事態になってしまったのがそれを象徴してい
る。誤った報道であるならまだしも、正しいことを報道出来ない民主国家とは如
何なる存在であろうか。英雄の失墜だけでなく、韓国内の問題点を浮き彫りにし
た今回のES細胞研究疑惑問題であった。