麻生外相は10日午前の閣議後の記者会見で、北朝鮮に対する経済制裁などに
ついて、「『圧力をかける』と言って、何もかけないままで終わったら、『何
だ、かけないじゃないか』となって話が進まなくなる。いろいろな案が出てい
るのは確かだが、今は話す段階ではない」と述べ、先の日朝政府間協議で前進
がなかったことを踏まえ、北朝鮮に対する圧力を強める具体策を検討している
ことを明らかにした。一方で、外相は「協議で新しいものが何も出てこなかっ
たのは確かだが、5日間かけて討議が進められた。いろいろな意見を率直に言
い合うことができ、『次も話し合いを』という兆しが感じられる」と語った。

 

まるで成果の無かった協議であったが、それは想定の範囲内と言ったところで
あろう。豊作により、北朝鮮にしては食糧事情にある程度(それでも援助が必
要なレベルだが)余裕が出来、その分を軍に回し金王朝の土台を必死で支えて
いるのが現状で、米国がマネーロンダリングに使用していたマカオの銀行のル
ートを潰し、北朝鮮への金融制裁は相当な効果をあげている。当の米国も偽ド
ル札には手を焼いており、流出ルートを潰すことが貨幣価値を維持していく上
で、最大の課題であることは言うまでも無い。

 

そして我が国である。協議ではお互いの主張を言うだけでまったく噛み合わず
残る拉致被害者の帰国は未だ果たせていない。のらりくらりでもなく、一方的
に主張を言う国は北朝鮮だけでなく、中国もそうかもしれないが、もともと折
れることを知らない国にとって、痛いところを指摘されると烈火のごとく強弁
し、会議そのものをぶち壊してしまう。少なくとも、今我が国に出来るのは制
裁のポーズに終わるのではなく、制裁のための手段を講じることであろう。む
げに時間だけが過ぎていくのは、あまりにも拉致被害者の家族にとって辛く長
い時間となってしまうことだろう。