「辞めたいが辞めさせてもらえない」といった従業員からの問い合わせが労働
組合などの相談窓口に増えている。会社から「代わりを探してから辞めろ」と
言われたり、「辞めたら損害賠償を請求する」などと脅された深刻なケースも
多い。景気回復による人手不足やリストラで仕事が特定の人に集中している最
近の労働環境が背景にあるようだ。NPO法人「労働相談センター」では、「
解雇」や「賃金」に関する相談が01年をピークに減少、この数年は「辞めら
れない」など「退職」に絡んだ相談が増えた。同種相談は昨年559件で、9
8年の5.5倍だ。プログラマーや看護師など専門知識を必要とする20代後
半から30代の若者が多い。会社は、中小企業が大部分だという。

 

景気の長期低迷によるリストラと採用抑制の影響がもろに出てきたのだろう。
もともと人員の少ない中小企業であるなら特に影響を蒙っていると思われるが、
下請け中心の企業にとっては厳しい状況の中で採用を抑え、少ない人員で仕事
を回さざるを得なかったのは間違いないことだ。専門知識を必要とすると言う
ことは企業側も代替要員の確保は困難であり、当事者も仕事に忙殺される中で
辞めたいと思うのも当然であろう。若手とは言えども、あまりに一人で多くの
仕事を抱えることは決して効率の良いことではないし、労働環境の悪化はやは
り好ましいものではない。上司に「辞めたい」と打ち明けた時点で、無理矢理
引き止められたところで、その職場に居辛いのも事実であろう。

 

少人数で効率的な職場の構築がどの企業においても成立し得るものではない。
人手不足が解消されないことには、いつまで経っても同じ人間が同じ仕事をし
続けることになり、次の人材に仕事を引き継ぐことが困難になる。格差社会
は良く聞く言葉ではあるが、人手不足による仕事の激増とは無縁ではあるまい。
残業代も出ずに毎日毎日遅くまで働かされるのなら、辞めたいと思うのも当然
ではないか。非正社員の激増と言う雇用情勢の変化により、今までのような職
場環境が続くわけでもないのも、また事実である。