「嵐の中で船長がかじを手放し、水夫が逃げ去り、3人しか残らない党に
日本の未来を任せるわけにはいかない」。自民党中川秀直幹事長は17
日の党大会であいさつし、嵐の船上で民主党小沢一郎代表が奮闘するC
Mを揶揄した。民主党のCMは、船のかじを取る小沢氏が突風に吹き飛ば
されながらも、菅直人代表代行、鳩山由紀夫幹事長の助けを得ながら船を
進める内容。中川氏は「与党の船長、安倍晋三総裁はどんな荒波でも決し
てかじを手放さない」と小沢氏との違いをアピールしていた。

 

政党にとっても広報戦略は必要不可欠なものであるが、民主党の新CMは
党内からも批判の声があがるなど散々な評価を受けている。2005年の
総選挙では争点を郵政民営化に賛成か反対かに絞った戦略が功を奏したと
され、民主党はそれに引っ張られる形で本来問うべきであった年金問題
を完全にかき消される格好となり、さらにCMも「日本をあきらめない」
と言う後ろ向きでネガティブなイメージを予想させるようなコピーであっ
た。結果として民主党は大敗を喫し、政権交代がはるか遠のいてしまった。

 

安倍首相は首相補佐官に広報担当として、先の総選挙で広報戦略の陣頭指
揮をとった世耕参院議員を置き、現時点での万全の体制を整えている。か
つてナチス・ドイツが宣伝相を置いたように、広報の有効性はマスメディ
アの発展とともにより増している。ナチスはそれを謀略に用いたわけだが、
有効性と同時に危険性もまた認識せねばならないだろう。少なくとも民主
党のCMを見る限りでは、その心配はしばらく無さそうだが。