日中両国政府の合意を受けて2006年末から進められている「歴史共同
研究」で、中国側が「対中侵略の計画書」と位置付け日本側と真偽論争を
続けてきた「田中上奏文」について、中国側が「偽物」と認める見解を示
していることが分かった。中国は同文書を対日批判の根拠としてきたが、
公式な研究で見解が見直される可能性があり、歴史認識の違いを埋める一
歩となりそうだ。

 

真偽が定かでは無い文章などゴロゴロと転がっているものだが、それを対
日批判の材料として利用されたのではたまったものではない。日中両国が
共通の歴史認識を持つことは違う国であるし、人によっても歴史の受け止
め方は違うと言うものだ。だからと言って嘘を声高に叫ばれては黙ってい
るわけにもいくまい。今回「田中上奏文」が偽物であるとの見解が示され
そうだとの見込みは歓迎せねばなるまいが、これをもって歴史認識の溝が
埋まったわけではないのだ。

 

歴史認識と言う対日カードを中国は破棄したりはしないであろうし、これ
からもカードを切り続けてくることだろう。確かにこれは第一歩なのかも
しれないが、額面通りに歴史認識の溝が埋まったとは到底思えない。公式
な研究との位置付けも中国国内ではどう扱われるのか、メディアを牛耳る
のは他でも無い政府なのだ。わざわざ「田中上奏文」が偽書であったと国
民に知らせるわけもなかろう。研究者間でケリがついた、その程度の認識
で良いのではなかろうか。