ロシア大統領選は3月2日の投票が目前に迫ったが、モスクワ市内では、
候補者のポスターなど選挙戦の熱気を感じさせるものがほとんどない。メ
ドベージェフ第一副首相の当選が確実視される中、市民にはしらけムード
も広がっている。クレムリンに隣接するマネージ広場には、隣り合う建設
現場の壁面を利用し、プーチン大統領とメドベージェフ氏が並んだ巨大な
写真が掲げられている。市内でほぼ唯一、選挙を実感させる場だ。「共に
勝利する!」と大書きされ、投票日を告げているが、粉雪が吹き付ける広
場で見上げる通行人の姿はなかった。

 

ロシアと言う大国の大統領を決める選挙だと言うのに、このムードはいっ
たい何なのであろうか。資源価格の高騰によって、財政は潤っているよう
だが、言うなればそれは一種のあぶく銭に過ぎない。政府系ファンドを立
ち上げ運用していくにせよ、それは国の力そのものではないのだ。それら
の実績がプーチン大統領の圧倒的な支持につながっていると思われるが、
民主主義を掲げているのは看板だけなのだろうか。初めから結果の決まっ
た選挙で選ばれた大統領に何の意味があるのか疑問である。「投票には行
くと思うけれど、勝者はもう決まっているから」との若者のコメントがと
ても印象に残った。プーチン大統領院政が思惑通りに進むかは、その時
の情勢によりけり、であろうが。