北朝鮮による日本人拉致問題で、北朝鮮側が安否不明被害者の再調査に応
じる姿勢を示したことに対し、政府は13日、経済制裁の一部を解除する
方針を表明した。「一定の前進」を強調する政府に、被害者家族らは「進
展とは程遠い」「納得する家族はいない」と猛反発。結果が出る前に、北
朝鮮側に大幅譲歩したことに怒りは収まらない。「外交」というパワーゲ
ームに飲み込まれてしまいそうな家族らの思い。政府への不信感が一気に
膨らんだ。「家族が求めてきたのは、被害者の帰国。あくまで全面解決だ
」。家族会代表で、田口八重子さんの兄、飯塚繁雄さんはそう言い切る。
日朝の交渉は膠着状態が続いていた。今回の協議の行方には期待を膨らま
せてきただけに、落胆は大きい。北朝鮮側がよど号乗っ取り犯の引き渡し
への協力を前面に出してきたことにも警戒感を強める。

 

自身の政権で拉致問題を解決すると就任時に表明した福田首相。衆参ねじ
れのもとで、国政が停滞する中で得意とされる外交で点数を稼ごうとでも
思ったのか、北朝鮮の安否不明被害者の再調査の姿勢に対して、経済制裁
の一部を解除する方針を打ち出した。再調査の姿勢を示しただけで、こう
も簡単に譲歩したことに北朝鮮はほくそ笑んでいるのではないか。これで
北朝鮮が情報を小出しにしてくることは確定したようなものだ。一定の前
進があるたびに、北朝鮮が目指す植民地支配の「過去の清算」へと近付い
ていく。我が国と北朝鮮が国交を回復することに何のメリットがあるので
あろうか。拉致問題の完全解決無くして、北朝鮮との国交正常化などする
べきでは無いと、今こそ福田首相は思い出すべきだ。安易な妥協は我が国
に大きな禍根を残す。北朝鮮の姿勢を額面通りに受け止めることを評価す
ることは出来ない。