ドバイの中堅建設会社で工事現場監督を務めてきたインド人のV・ヒレ
タさんは今月12日、1枚の紙を手渡された。「あなたが提供するサービ
スは必要なくなりました。滞在許可も1か月後に失効します」クレーンを
操縦していた同郷のスンニル・Bさんも解雇された。ドバイには世界のク
レーンの3割が集まっていると言われてきたが、「今は多くが止まってい
る。再び職を得るチャンスはまずない」と、帰国の覚悟を決めたようだっ
た。ドバイ居住者の8割を占める外国人労働者の滞在許可証は、仕事や労
働許可証と不可分に結びついている。職を失えば、雇用主が労働局への解
雇届け出を遅らせるなど特別な措置を講じない限り、1か月以内に出国し
なければならない。「ドバイには失業者がいない」と言われるゆえんだ。

 

金融危機の影響で、ドバイに流れ込んでいた資本が止まり、資金繰り悪化
に苦しむ不動産・建設業界は大規模なプロジェクトを停止ないし中止せざ
るを得ないようだ。外国人労働者はこれらの大規模プロジェクトを支えて
きたわけだが、簡単に解雇されてしまう立場でもあった。砂漠の中に林立
する巨大なビル群が、文字通り砂上の楼閣となってしまった感もあるが、
半世紀前までは何も無かったようなところに、あれだけの都市を作ってし
まったスケールの大きさには、今さらながら感心せずにはいられない。だ
が、金融危機はすぐに解決するような話でも無く、世界のクレーンの3割
が集まると言われたドバイも、建設そのものが止まり、解体するにも資金
の出し手がいない、そんな状況に陥れば、廃墟のような都市に様変わりし
てしまうのは言うまでも無いことだ。