選挙戦最終日となった29日、麻生太郎首相と民主党鳩山由紀夫代表
の直接対決が首都東京で実現した。両党首は、豊島区の池袋駅前で「最
後のお願い」。真夏の12日間の戦いの幕を下ろした。夜空に空撮のヘ
リ7機が飛び交う中、麻生首相は同駅東口に登場。「政策を見比べた上
で我々に引き続き、政権を与えてください」と約6000人の聴衆に訴
えた。一方で直線距離にして約290メートル離れた西口公園前。鳩山
代表は約5000人を前に街宣車の上でガッツポーズを繰り返し、「ど
うやら池袋決戦になったようであります」と挑発的にぶち上げた。「大
政党の自民党民主党に、ネガティブキャンペーンばかり行った選挙戦
だった」と皮肉で応酬。午後8時の15秒前まで声をからした。

 

真夏の選挙戦となった中で、マスコミは民主党が圧倒的優位にあるとの
報道に終始し、有権者の投票心理にも少なくない影響を与えたことであ
ろう。自民党は4年前の郵政選挙とは打って変わり、猛烈な逆風を受け
ながら、落選の危機にあった状況から激戦に持ち込み、一歩一歩と差を
縮めた候補もいたようだ。今回の選挙戦を見て思ったのは、マニフェス
トの中身がどうこうと言うよりも、政党本位での選挙になってしまって
いるということである。つまり、民主党が優位にあるのは、自民党以外
の投票先としての受け皿でしかないのだ。政権交代が実現した後、鳩山
政権が誕生した際に、おそらく支持率は相当高いものとなるだろうが、
有権者が期待した政治が実現しなければ、期待が高かっただけに、落胆
も大きいものとなるのではないか。我が国が抱えているのは、短期的に
結果を出せるような課題ではないのだ。それを理解せずに目先の政策だ
けに目を奪われてはならない。