鳩山由紀夫首相の資金管理団体友愛政経懇話会」を巡る偽装献金問題で、
東京地検特捜部が鳩山氏本人からの事情聴取を見送る方向で検討している
ことが、検察幹部への取材で分かった。会計実務担当だった元公設第1秘
書が任意の事情聴取に「自分の判断で政治資金収支報告書に虚偽記載した」
と供述していることなどから、鳩山氏の聴取は必要ないとの判断に傾いて
いる模様だ。特捜部は近く、鳩山氏側に詳しい事情をまとめた上申書の提
出を求める方針。鳩山氏は政治資金規正法違反容疑で告発されており、特
捜部は上申書の内容を検討した上で、規正法違反については不起訴処分に
するとみられる。ただ、偽装献金の原資の一部は実母からの資金提供であ
ることが判明しており、資金提供が「贈与」と認定されて税法上の問題が
生じた場合、鳩山氏は修正申告などを行う考えを示している。関係者によ
ると、政治資金収支報告書の虚偽記載総額は04〜08年で3億数千万円
に達することが判明。鳩山氏の実母から提供された約1億円、鳩山氏本人
が提供した約2億数千万円が原資になっていたという。

 

多額の資金を提供していたとされる鳩山首相の母親が、実にタイミング良
く入院したのも奇妙な話だった。都合が悪くなると入院する、入院させる、
このような古典的な手法で捜査を逃れようとするとは、政権交代が実現し
ても、政治家の体質は何ら変わっていないことを証明したに等しいだろう。
高齢の母親へ捜査の手が及ぶのは避けたかったのか、いずれにしても、秘
書がやったことで済ませてしまうようでは、これから同じような問題が起
きても、鳩山首相は批判する資格を失うことになる。全容が解明されない
まま幕引きが図られるのは、少なくとも国民は納得しないであろうし、疑
惑はいつまで経っても晴れないのだ。疑惑の解明には資金提供をした母親
の事業聴取を行うことが先決である。最近では鳩山システムなる言葉が見
られるが、これは鳩山首相の自身問題に対する姿勢を揶揄した言葉のよう
だ。「司法に任せる、結果を待つ、だから何も説明できない→総理大臣が
同意しない限り起訴されない(憲法75条)に守られていることになる→
自分の起訴に同意しないからいくら待っても起訴されない」と言う流れら
しいが、大まかには的を射ているだろう。しかし不起訴処分になろうとも、
疑惑はいつまでも残る。その際には、母親から自身で事情を聞くなりして、
不明朗な資金のやり取りの全容を明らかにすべきである。