[政治]

「腹案は既に用意している」。鳩山由紀夫首相は31日の党首討論で、米
普天間飛行場の移設問題に関し自民党谷垣禎一総裁に、政府案は実質
的に固まっていると強調した。また「現地の了解がなくて案を進めること
はない」と明言、地元の了解が前提との考えを示した。だが、政府案を巡
り関係閣僚や与党幹部の間では異なる思惑が交錯している。首相は「腹案
とは県内か、県外か、国外か」と詰め寄られ、「今日まで平和を維持する
ために沖縄の皆様方が大変貢献してくださった。これからは全国の皆様方
がその負担を分かち合う思いを共有していただきたい」と述べ、「県外移
設」を視野に地元自治体関係者の説得に自ら乗り出す考えを示した。普天
間の危険性除去でも「2014年より遅れることはできない」と表明した。
首相発言について、平野博文官房長官は31日の記者会見で「2014年
を待たずともできる限り負担を軽減する。危険性除去は常にしていかなけ
ればならない」と説明した。

 

迷走する普天間基地問題について、鳩山首相の口から飛び出したのは「腹
案」なる秘策だった。むろん、この腹案の中身が政府や関係閣僚の間で共
有されているとは思えず、その場しのぎの発言であるように思えてならな
い。普天間基地の一部を県外に移設し、ホワイトビーチ沖合に大規模な人
工島を建設する案が政府案のはずだが、社民、国民新が反対を申し入れて
おり、県外移設に傾く沖縄側も反対している。つまり、腹案=政府案であ
るなら、相変わらず袋小路に追い込まれたままであって、解決には程遠い
と言うことになる。腹案について仲井真沖縄県知事は「大いに期待しまし
ょう。でも、報道からしか情報が入らない。何も聞いていない」と語り、
地元の了解はこれから得るような案であることが分かる。そもそも、腹案
の中身を語れないのは何故なのか。党首討論で追い込まれた結果、うっか
り口にしてしまっただけではないのか。このままでは、米国だけで無く、
沖縄県民、そして有権者に対する裏切りとなる。