菅直人首相の消費税に関する発言を野党が「ぶれた」と批判していることに、
政府・民主党が神経をとがらせている。1988年の参院選で、橋本龍太郎
首相の減税をめぐる発言が迷走し、自民党の惨敗につながった経緯があるた
めだ。ただ、参院選直前に税率10%に言及した首相に対しては、民主党
でも小沢一郎前幹事長を中心に反発が強く、執行部は対応に苦慮している。
「そう取られちゃうのか」。首相は主要国首脳会議から帰国直後の29日未
明、首相公邸で寺田学首相補佐官から、消費税に関する自身の発言が「後退
した」と報道されたことを知らされると、こう嘆息した。

 

いつかは手を付けなくてはならない我が国の財政問題。本格的な長期政権を
目指す菅首相にとっては、避けては通れない道だったのかもしれない。しか
し、現実は支持率の下落として跳ね返り、党内からも反発が出始めている。
党内の非主流派に増税反対と言う大義名分を与えてしまったとも言えるので
はないか。そんな空気を察したのか、菅首相は「議論を呼び掛けるところま
でがわたしの提案だ」とトーンダウンし、引き上げについて話し合うまでと
線を引いてしまったが、そう簡単に取り消せるものではない。軽率だったと
言ってしまえばそれまでだ。自らの不用意な発言によって、当選が危ぶまれ
る候補がいることを、考えるべきだろう。