リビアの元最高指導者ムアマル・カダフィ氏の遺体が安置されるミスラタで22日、
独裁者の変わり果てた姿をひと目見ようという市民の長蛇の列が出来ている。ミス
ラタ南郊のショッピングセンター敷地内。冷たく薄暗い10メートル四方の保冷庫
内には、カダフィ氏と四男ムアッタセム氏、側近の軍司令官の3人の遺体が毛布に
包まれて置かれていた。顔の血のりなどはきれいにふかれている。見物人の列は、
敷地の外まで延々500メートル近くに及んでいた。中には、服喪を示す黒いスカ
ーフ姿の女性も。店員イブラヒム・ラハイブさんは「国民を40年以上も苦しめて
きた男の哀れな最期に言葉も出ない」と声を詰まらせていた。

 

独裁者の最期とはいつも哀れなものである。かつては英雄として国民の圧倒的な支
持を集めながらも、その長期に渡る独裁が命取りとなったのだろうか。リビアは石
油資源があることもあって、アフリカの中でも裕福な国であり、革命による所得分
配の結果、一人当たりの国民所得は1万4000ドルと高かった。それでも国民が
カダフィ政権の打倒に走ったのは、自由を制限されていたためであろうか。国民が
それぞれ相互を監視し合い、秘密警察に密告する。そんな社会が正しいとは思えな
いが、リビアを強固にまとめてきたカダフィ政権の後、反カダフィだけでまとまっ
てきた国民評議会が指導力を発揮出来るか。遺体を見せ物にするような、ガス抜き
をしているようでは、先が見えている気がするのだ。