野田佳彦首相は24日の政府・民主三役会議で、11月12、13両日のアジア太
平洋経済協力会議首脳会議での環太平洋戦略的経済連携協定交渉への参加表明に向
けて、党内論議を加速させる方針を確認した。ただ、24日も推進派・反対派双方
が「陳情合戦」を展開。議論を集約する立場の前原誠司政調会長が、交渉途中の離
脱の可能性に言及したことも波紋を広げている。TPPを推進する経団連の米倉弘
昌会長は24日、都内で玄葉光一郎外相と会談。米国がAPEC首脳会議での大枠
合意を目指していることを念頭に「もはや待ったなしの状況だ」と早期決断を迫っ
た。米倉氏はこの後の記者会見で、前原氏の発言を取り上げ、「不穏当な表現だ。
交渉入り後に途中離脱することはありえない」と苦言を呈した。

 

野田首相にとってTPPの交渉参加は前提条件のようだが、反対派をどう説得して
いくかは見えてこない。例えば、JA全中の万歳章会長は首相官邸藤村修官房長
官と会談し、1167万人分の反対署名を提出している。こう言った声を無視した
まま、交渉のテーブルにつこうと言うのだろうか。さらには党内の反対派も勢いづ
いており、民主党の支持母体である連合はTPP交渉参加に賛成だが、傘下の日本
食品関連産業労働組合総連合会はTPP反対を決めるなど、反対は生協や消費者団
体にも広がりつつある。経済界の要求と労組や消費者団体の反対、そんな板挟み状
態に陥っている野田政権。APECまで残り一ヶ月を切り、反対意見を封じたまま
交渉参加を表明するのであろうか。難しい判断を迫られている。