中国の民主化運動を武力弾圧した1989年の天安門事件から16年の4日、
中国政府は犠牲者の家族を自宅軟禁下に置くなど警戒態勢をとったものの、北
京の街並みは観光客や家族連れがいつも通り行き交うなど平穏で、確実に事件
の風化が進んでいることが明らかになった。

 

中国共産党天安門事件を「暴乱」(騒動)と決め付け、学生を暴徒扱いして
いたが、学生が要求したのは体制への挑戦ではなく、あくまで政治改革や民主
の拡大であり、腐敗の取り締まりであった。政治改革はおざなりにされ、一党
独裁体制の社会主義を維持したまま市場経済を導入したという点では、当時よ
り「歪み」大きくなっていると言えるだろう。

 

中国政府の発表によれば、天安門事件による死者は319人に上る(正確な数
字なのかは疑問が残るが)。中国国内ではこの事件に対して黙殺しているため、
今の若者たち等はこの事件を知らない世代へと変わりつつあるとの指摘もある。
世界中から多くの批判が浴びせられた事件が、国内ではいっさい黙殺されてい
るとは驚くばかりである。

 

こんな時こそ、事件を鑑として見つめなおしてはどうだろうか。我が国に歴史
認識を問う前に、たかだが16年前のことを忘却の彼方より呼び覚ましてみて
欲しいものだ。少なくとも世界は、あの愚行を忘れはしない。