千葉県船橋市立西図書館が著書を廃棄したため、表現の自由を侵害されたとし
て「新しい歴史教科書をつくる会」と作家の井沢元彦さんら7人が、市に慰謝
料など2400万円の支払いを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第一小法廷
は14日、「公立図書館は思想、意見を伝達する公的な場で、職員の独断によ
る廃棄は著者の利益を侵害する」との初判断を示した。

 

事の発端は扶桑社が発行した教科書の採択をめぐり激しい論争が起きていた2
001年8月、司書が同会編集の書籍や会員の著書などを、廃棄基準に「該当
しない」のに蔵書リストから除外し、107冊を廃棄した。市は翌年、この司
書を減給の懲戒処分とし、廃棄図書のほとんどは、司書らが同じものを寄付し
て補充したが、井沢さんらは「一方的に排除する思想弾圧で、表現の自由や著
者の人格権を侵害された」として司書と市を相手に提訴したわけだ。

 

日本の図書館は「図書館の自由に関する宣言」を行動規範に掲げており、この
宣言では権力の介入拒否だけでなく「思想や宗教による著作の排除や館員の個
人的関心や好みによる資料の選択をしない」と自らの管理責任も強調している。
要は蔵書が特定の思想によって左右されては、利用者であるはずの住民へのサ
ービスとしては問題なのだ。あくまで公立図書館であるのだから、特定の思想
に染まっていては、公共性は失われてしまうはずだ。