「百人斬り」訴訟で遺族側請求を棄却した判決を受け、原告の旧日本軍将校の
遺族側と被告のジャーナリスト本多勝一氏らが23日、東京・霞が関の司法記
者クラブで、それぞれ記者会見した。遺族の1人は「百人斬りは物理的、理論
的にもあり得ないと確信している。判決で『なかった』と明確に示されず、残
念だ」と話し、「あり得ない武勇伝を書き続ける本多氏はジャーナリストとし
て許されるのか。書き得だ」と批判した。これに対し、本多氏は「全く当然の
判決。もともと歴史上の事実で、疑問の余地はない」と淡々とした表情。「本
来、歴史のテーマである問題を裁判に持ち込んだこと自体、南京大虐殺や中国
侵略の事実を否定しようとするものだ」と指摘した。

 

この訴訟は1937年に旧日本軍が中国の南京へ侵攻した際、2人の少尉が中
国兵を競って切り倒す「百人斬り競争」を行ったとする記事で名誉を傷付けら
れたとして、少尉の遺族が毎日新聞社(当時の東京日日新聞)、朝日新聞社
柏書房の3社と、本多勝一元朝日新聞編集委員に計3600万円の損害賠償
などを求めていたものである。この2人の少尉は向井敏明少尉、野田毅少尉で
あるが、いわゆる百人斬りが事実であったことが明確でないにも関わらず、中
国の抗日記念館の類には、東京日日新聞に掲載された百人斬りの記事が拡大コ
ピーされ展示されている。2人の遺族は戦犯の家族であると後ろ指をさされ、
また2人の名誉を著しく傷つけられ苦しんでいた中での訴訟であった。

 

今回の判決では「虚偽、誇張が含まれている可能性が全くないとは言えないが、
何ら事実に基づかない新聞記者の創作とまで認めるのは困難」と判決理由を述
べ、「百人斬り」の真偽については、「さまざまな見解があり、歴史的事実と
しての評価は定まっていない」としている。要は裁判所が歴史的事実の判断な
ど出来ない、と宣言したと言うことだ。これでは事実であると思われるだけで
様々な見解があろうとも、書き得を許す放任行為ではないか。第一、毎日新聞
が出版した『昭和史全記録』では「百人斬りは事実無根だった」と書いている
のである。事実ではないと思われるケースを想定していない、正に一方的かつ
原告を突き放した司法の判断であった。なお、当然ながら原告は控訴する模様。