自民党武部勤幹事長が街頭演説で、「比例区公明党に協力を」と呼びかけ
たことが波紋を広げている。政党同士が得票を競う比例区で、党務の最高責任
者が他党への投票を呼びかけるのは極めて“異例”のためだ。すでに自民党
小選挙区候補が公明党の支援を期待して「比例区公明党」と訴えるケースが
相次いでいるが、党内からは批判の声が出ている。

 

公明党太田昭宏幹事長代行が出馬する東京12区で、郵政造反組八代英太
氏が無所属で出馬することにより、自公選挙協力の象徴は脆くも崩れ去ってい
る。一時、矢代氏が小選挙区からの出馬断念を発表した際には、自公の関係は
変わらないのかと落胆したものだが、一転八代氏が出馬を決めたことで俄然こ
の選挙は面白くなってきた。小泉首相のこれまでのやり方は自民党をぶっ壊す
ことで、旧来の集票マシンを破壊することでもあったわけだが、その代わりに
学会票に支えられてきた面も当然ある。

 

自公の選挙協力が機能しなくった際に本当に自民党は敗北するのか。票読みの
容易な学会票とは言え、全国津々浦々の選挙区をカバー出来るほどの実態があ
るのか疑問が残る。確かに激戦区となれば、最後の一押しは強力この上ないも
のであるが、やはり「比例区公明党」と訴える自民党候補に魅力を感じる有
権者は少ないであろうし、では民主党に入れようと思う場合もあるだろう。始
めから学会票に依存する自民党候補など、支援者にとっては怒り心頭ではなか
ろうか。

 

同じ与党であろうが、一つの自立した政党が「他党に投票しろ」というのは政
党本来の存在を否定するような行為であり、「本当」の自民党の支持者をどん
どん減らしていき、自滅することになりかねない。他党を利するために選挙を
しているのではないはずだ。学会票など眉唾物だと思い、たまには初当選でも
した時の選挙のように汗にまみれてはどうか。東京12区はその良い指標にな
るやもしれない。