先の総選挙では小泉首相のメディア戦略が自民党の歴史的大勝利を生んだと、
メディア自らが報道していて滑稽極まりないことだ。この10日ほど一通りの
新聞を読んでみたが、小泉首相にしてやられたはずのメディアが反省した様子
は一向に見受けられなかった。衆院解散から「刺客」「くの一」といった言葉
が紙面や画面で踊り、メディアが作り上げた劇場型選挙ではなかったのか。第
一、小泉首相は反対派の対抗馬を「刺客」やら「くの一」などと表現したこと
もなく、メディアが使い出した言葉であるはずだ。

 

言うなれば自民党の大勝はメディアが一役買い、それは立派な政府広報を果た
していたことでもある。とかく、どこぞの局の開票速報番組では自民党大勝が
明らかになるにつれ溜め息をつくようなキャスターがいたようだが、公示から
投票日まで連日繰り広げられてきたメディアの小泉劇場に対して、そのキャス
ターは何もしてこなかったのではないか。したつもりでしかなかったのであれ
ば何の意味も無い。それではワイドショーと大して変わりはしないのである。
面白おかしく「刺客」対「造反組」を描いてきたのは何よりメディアの側であ
り、それが小泉首相の戦略であったと自ら言うのならメディアは反省すべきで
はないか。

 

「刺客」の送り込まれた選挙区の当落を大々的に扱い、マドンナであるとか美
人であるとか選挙をイベントの一種であるかのように勘違いした報道も、自民
党大勝が明らかになった時点で何を思ったのだろうか。むろんメディアの操縦
に長けた小泉首相の戦略に敬服するまでもなく、メディアは頬かむりを決め込
みまんまと乗せられた失態など無かったことにするつもりに違いないが、少な
くともこの選挙は大いに参考になる点も多く、メディアによって増幅された風
無党派層を投票させたこと、その一点だけは評価したい。