小泉純一郎首相の靖国神社参拝が憲法の定める政教分離に反するとして、四国
の住民らが、国などに損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で高松高裁(水野武
裁判長)は5日、「参拝により、法的保護に値する利益の侵害があったとは認
められない」として、憲法判断を示さないまま原告の控訴を退けた。首相の靖
国参拝では先月末に、大阪高裁が違憲判断を出す一方で、東京高裁では憲法
断を避けた判決がでたばかり。一連の訴訟は全国で七件が提起され、地裁で七
件、高裁で四件の計十一件の判決が出ている。うち九件が憲法判断に入らない
まま判決を導き出し、全体の主流となっている。

 

いわゆる傍論で違憲判断をし、判決自体は国側の勝訴となるケースはねじれ判
決として、国側はこれを不服としても控訴出来ない問題を抱えている。今回の
高松高裁は判決で、「具体的事件の解決のため必要となる場合にのみ、憲法
釈を判断するのが裁判所における違憲審査の在り方。本件で憲法判断をしなけ
ればならないというものではない」とあえて説明している。一方で昨年4月に
憲法判断に踏み込んだ福岡地裁では、、「裁判所が違憲性の判断を回避すれは
今後も参拝が繰り返される可能性が高く、当裁判所は違憲性の判断を責務と考
えた」と読み方によっては個人的な考えのように読める。

 

裁判官も人であるから、時には首をかしげたくなるような判決をすることがあ
るかもしれないが、それが法的根拠とはならないとは言え傍論で違憲判断をす
るような手段を使って良いわけではない。とかくこの手の小泉首相靖国参拝
における訴訟は全国各地で、文字通り「数撃ちゃ当たる」的なやり口なのだか
らきちっとした判決が各裁判所には求められるのではないか。あくまで判決の
結果を政治利用したい勢力に組することなく、冷静かつ正しい判決を期待した
いところだ。