AFP通信によると、インド軍報道官のセガル中佐は13日、パキスタン地震
で壊されたパキスタン軍の塹壕の再建に協力するため、インド軍兵士が両国が
領有権を争うカシミール地方の実効支配線を越えて、パキスタン側に越境した
と語った。このような形でのインド軍兵士の越境は前例がないという。なお、
パキスタン北部を襲った大地震で、同国軍スポークスマンが公式数字としてA
FP通信に明らかにしたところによると、13日までに死者は約2万5000
人、負傷者は約6万3000人に達したとのこと。

 

こういった大災害では旧敵同士が手を携えることはままあることだ。宗教的な
対立や国境線をめぐる争いも、人道の名の元に一時休戦となり負傷者の救助か
らアフターケアまで手を貸すことがまず第一であろう。それを躊躇無く実行出
来てこそ成熟した国際社会の一員なのだ。むろん、スマトラ沖地震のように各
国が援助額で見栄を張るような事態は、はっきり言って見苦しいばかりである。
特に我が国の援助額に面子を潰されたと憤る某国は何とかならないものか。そ
んなことで騒ぐ前に、やるべきことがいくらでもあるはずだ。

 

このインド軍の越境も、地震に乗じてカシミール地方を制圧なんぞしないとの
意思表示の表れなのか、その辺まで読み取るのは難しいが塹壕をわざわざ再建
するのを手伝うあたりからして妥当なところであろう。我が国もパキスタン
震の被災地支援のため、陸上自衛隊・国際緊急航空援助隊を編成し2、3週間
の日程で被災地への救援物資輸送を行うことになっており、地震大国でもある
我が国のノウハウを発揮してもらいたいところだ。

 

この悲劇を印パ両国の信頼醸成に役立てようと書く向きもあるが、それはそれ
これはこれ、と言うのが現実であろう。だが、今は共通の目的がある以上、一
時はわだかまりを忘れ協力してこそ国際社会も力を貸すことだろう。