海軍横須賀基地への原子力空母の配備について、神奈川県の松沢成文知事は2
9日「政府は地元の意向を尊重すると言うが、結局は一方的に地元に通告する
だけだ。何のための日米交渉なのか全く分からない」と述べ、日本政府の姿勢
を非難した。原子力空母配備の方針は28日朝、訪米中の知事に外務省から電
話で伝えられ、直後に町村信孝外相が受け入れを表明した。知事は「原子力
母配備を当然と考えていたなら、なぜわれわれが(通常艦配備を)要望に行っ
た段階でそう言わないのか」と不信感をあらわにした。

 

各新聞も社説でいっせいに政府の原子力空母配備の受け入れを批判しているが、
その理由が「原子力艦船における事故の危険性」、要は万が一の放射能もれを
指していると思われる。また核兵器の持ち込みが行われるかもしれないとの懸
念も、これは従来通り「本音と建前」の使い分けをしていくだけではないか。
もし本当に今までも一度足りとも米軍が我が国に核兵器を持ち込まなかったと
本気で主張出来る人はいないだろう。極東アジアをにらむ上で、在日米軍はそ
の役割を終えたわけではなく、北朝鮮の核問題をはじめ中国の軍拡など懸案事
項は多岐に渡っている。決して平穏な地域ではないのだ。

 

社説ではその他に唯一の被爆国として核廃絶に力を入れていくべきなのに、そ
れを破棄したに等しいとの批判もある。果たして我が国がどれだけ核廃絶の役
割を担えると言うのであろうか。国際社会に向けてメッセージを発することで
本当に核保有国が「はい、核兵器を捨てます」と言う訳もなく、せいぜい出来
ることと言えば、旧式化した核兵器の廃棄を支援していくことぐらいでしかな
いだろう。事実上、不可能なことを政府に押し付け批判の材料にすることは卑
怯であり、何ら具体性のある対案を出すわけでもなく無責任極まりないことを
しているのだと自覚してもらいたいものだ。

 

むろん、米軍の訓練等の騒音と言った直接的な被害もあることは重々承知して
いるが、ただ「原子力」と言うだけで批判をするのはどうか。それでは原発
抱えている県はいったいどうなると言うのか。批判するのはタダかもしれない
が、実情を踏まえた上で受け入れは止むを得ないのではなかろうか。