3日に横浜アリーナで行われた「ハッスルマニア2005」で和泉流二十世宗
家の和泉元彌鈴木健想戦でプロレスデビューを果たし、白星を飾った。試合
途中、青の狂言装束に身を包み、天井から登場。張り手2発を食らい、失神寸
前に陥ったが、最後は「空中元彌チョップ」4発をさく裂。元WWE世界タッ
グ王者から奇跡ともいえるピンフォール勝ちを奪った。狂言師がプロレスの壁
を打ち破った。和泉がコーナーから舞った。健想に受け止められたが、肩車の
体勢から足で首を絞めながら、右手チョップを頭に振り下ろす。気をためて放
った4発目、健想は音を立てて崩れた。「1、2、3」。大番狂わせを告げる
ゴングが鳴り響いた。

 

「この気持ち。言葉では言えません。感無量です。出てくるのは涙ばかり」。
狂言師として上がった異次元の世界での大金星。「何かを勝ち得ることができ
たと思う。プロレスの会場は温かかった」と、笑顔で勝利の余韻に浸った。
ワンマッチ型の興行スタイルとWWEのような言わば芝居がかった試合運びと
従来のプロレスの枠組みに捉われない「ハッスル」は、有り得ない組み合わせ
を次々と実現させ、プロレスをエンターテインメントの域にまで昇華させつつ
あるのかもしれない。敢えて真剣勝負ではなく、エンターテインメントである
と堂々と主張出来るところも強みであろう。

 

本来、我が国のプロレスは真剣勝負であるとの「建前」の中、一時期は総合格
闘技の場へと出張ってみたりもしたが、トップクラスの選手でもあっという間
に惨敗を喫するなど、自ら化けの皮を剥いでしまった感もある。桜庭和志のよ
うに、もともと総合格闘技志向のある団体にいれば「プロレスラー」でも勝て
る要素はあったであろうが、新日本プロレスのように格闘技路線を目指しつつ
頓挫してしまうと目も当てられない。ハッスルを真似しろとまで言うつもりは
無いが、メディア戦略はハッスルを運営するDSEが一枚も二枚も上手である。
老舗団体もその辺は見習っても良い点ではなかろうか。