久々に「安倍節」が戻ってきた。政府のスポークスマンに就任以来、慎重な言
い回しに終始していた安倍晋三官房長官が16日の記者会見で、中国やロシア
の対応を一刀両断するなど保守派論客らしい明快なコメントを披露した。自民
党内からは「やはり安倍氏はこうでないと」との声が上がる一方、政権の保守
化を警戒する政府・与党関係者からは冷ややかな視線も。第一弾は午前の記者
会見。ロシアのプリホチコ大統領補佐官が、日露首脳会談での政治文書の調印
見送りを示唆したことに、安倍氏は「日露両国が準備作業を一生懸命行ってい
る中、大統領府の高官が報道にあるような発言を行ったことは極めて遺憾だ」
と批判した。

 

さらに、中国の李肇星外相が15日、小泉純一郎首相の靖国神社参拝を「ドイ
ツの指導者がヒトラーナチス(の追悼施設)を参拝したら欧州の人々はどう
思うだろうか」と批判したことについて、安倍氏は「その例示について違和感
を覚える」と強い不快感を表明。「総理は国のために殉じた方々のご冥福をお
祈りするためにお参りしており、特定の人物に対して参拝しているのではない」
と反論した。午後の会見では「『国のために殉じた方々』に東条英機元首相ら
当時の指導者も含まれるのか」と質問され、「祭られている方々をここで一人
一人論じるべきではない」ときっぱり。「そういう名前を挙げるのならば、(
祭られている)二百四十万人の方々の名前を挙げてほしい」と記者に反撃する
場面もあった。

 

官房長官と言う政府のスポークスマンの立場上、あまり威勢の良い事ばかり言
ってられないとは言え、安倍氏と言えばやはり北朝鮮への経済制裁を示唆する
など明快なコメントをして欲しいものだ。むろん立場と言うものがあるわけで、
ポスト小泉をにらむ上でメディアに言葉尻を捉えられて「失言」をしたかのよ
うに報じられては元も子もない。今まで通りとはいかないまでも、中国の外相
靖国神社の参拝にナチスヒトラーを引き合いに出すような暴言をしたから
にはきっぱりと反論を加えてこそ、我が国の立場を明確に出来るはずだ。安倍
氏の人気は世論に支えられるものであって、ただのスポークスマンで終わって
しまうようではその人気にも陰りが出てくるのではないか。

 

わかりやすいことが何よりも良いとはまではいかないが、いずれにしても自ら
の立場もはっきりとせず、その場しのぎの対応で国益を損ねてきた連中よりは
遥かにマシであろう。言うべきことも言えない、そんな国にならないためにも
時には強硬とも見える姿勢をとることも時には必要だ。