「『鉄筋の数を減らせ』と圧力を受けた」「指示したことはない」。マンショ
ンなどの構造計算書偽造問題で、姉歯秀次一級建築士に対して行われた24日
国土交通省聴聞会。取引先からの指示を明言した姉歯建築士の弁明を、偽
造物件の建築主や施工業者はそろって否定した。「誰を信じれば……」。マン
ション住民らは不信感を募らせた。偽造が判明した完成済みの分譲マンション
7棟の建築主であるマンション販売会社ヒューザー聴聞会を受けて「当社が
鉄筋の量を減らせと指示したことはありません」との小嶋進社長コメントを発
表した。この日夜、偽造物件の1つ「グランドステージ東向島」の住民説明会
に出席した小嶋社長は姉歯建築士への指示について「あり得ない」と改めて否
定。「自分でお金を使ってインチキ物件を建てるバカがいるか」とも話した。

 

建築業界そのものを揺さぶるようなことをやっておきながら、責任のなすりつ
け合いと化したこの問題であるが、姉歯建築士が指示を受けたとされる取引先
の情報を洗いざらい話すことがまず重要ではあろう。建築基準法の要件を満た
す設計を提出したが、何度も取引先から「鉄筋を減らせ」と言われたことから
、「仕事がなくなると困る」と思って偽造したとしており、さらに用件が満た
せない場合は他の業者に発注するとまで言われたと語っている。姉歯氏同様に
偽造を行う他の業者が存在すると言うのであれば、事はこれだけに収まらず不
審な建物は徹底的に調査すると言う壮大な無駄が発生することになる。プロで
あれば本来見抜けたはずの偽造も、民間検査機関「イーホームズ」では、「偽
造は巧妙で、簡単には見破れなかった。当社としては適切な業務を行っていた
と思っている」などと平然と回答している。

 

もっともイーホームズの社長が偽造に気付いた後に、建築主の「ヒューザー
から偽造の公表を差し控えるよう求められたことも明らかになっており、どの
部分でも問題を相当に抱えていることがわかる。東京都でも住民の支援として
緊急措置として都営住宅、都民住宅、公社住宅を活用して、受け入れることを
決定した。業界に大きな禍根を残すであろう偽造問題、大枚はたいて買ったマ
ンションが欠陥だったとは住民に同情を禁じえない。徹底的な追及を望むもの
である。