日本経団連奥田碩会長は5日の記者会見で、株価が上昇していることに関連
し、「日本全体がバブル期のような雰囲気を持ってきた。人が買うから俺も買
うというムードになりつつある」との認識を示した。また、奥田会長は、株価
以外にも「日本全体が金目当てになりつつあると思う」と指摘。耐震強度の偽
装問題を引き合いに出し、「ああいうことをしてまでも金もうけをしたいとい
う倫理感に乏しい経営者が出てくるのは問題だ」と述べ、「前回のバブルの轍
を踏まないように、国民全体が行動しなければならない」と警告した。

 

同じ過ちを繰り返すまいと誓う経営者は多いはずだが、株価が続騰する中で
週刊誌までが投資を煽るのが今の現状であろう。友人は自分の会社が週刊誌で
紹介されただけで、株価がいきなり高値をつけたと驚いていた。それだけ個人
で株に投資するようになったと言うべきなのか、「バスに乗り遅れるな」的な
発想で資金を投じるようになれば、それこそバブルであろう。さすがにそこま
ではいっていないはずだが、比較的生活に余裕のある人の投資先として株が選
択肢になっているのは間違いないはずだ。

 

所得の二極化が言われる中、奥田会長の言うような皆が皆「金目当て」とまで
いくような世の中になりつつあるとは思わないが、バブル後の長引く停滞期を
体験した世代にとって、少しでも生活を楽にしたいと願うのは想像に難くない。
何かの番組で住友信託銀行基礎研究所の伊藤洋一氏が言っていたが「このまま
ではまずいと言っているうちは、まだ大丈夫。だが、誰も言わなくなりメディ
アも現状の危険性について取り上げなくなった時は本当に危ない」とは確かに
事の本質をうまく表している。同じ轍を踏まぬようコントロールするのは我々
人間のはずであるが、熱狂は全てを見えなくする。それが恐いのだ。