北朝鮮による拉致被害者曽我ひとみさんが、横田めぐみさんを拉致した実行
犯として、別の拉致事件に関連して国際手配中の元工作員辛光洙容疑者の名前
を挙げていることが5日、関係者の話で分かった。新潟県警など警察当局も同
様の情報を把握しており、国外移送目的略取容疑で捜査する方針。辛容疑者は
地村保志さん、富貴恵さん夫妻の拉致事件でも、警察当局が実行犯として国外
移送目的略取容疑で逮捕状を請求、国際手配する方向で捜査を進めている。め
ぐみさんは中学1年だった1977年11月、バドミントン部の活動を終えて
下校途中に、新潟市内で北朝鮮に拉致された。めぐみさんと曽我さんは拉致さ
れた直後、平壌の招待所で一緒に生活し、辛容疑者が2人の教育係だったこと
が既に分かっている。関係者によると、曽我さんは辛容疑者から直接、めぐみ
さんを拉致したことを聞いたと証言したという。

 

日本の警察は辛光洙を国際指名手配し、北朝鮮に身柄の引き渡しを求めている
が、韓国で獄に繋がれた後に恩赦で北朝鮮に英雄として帰還した辛容疑者を引
き渡すことなどないであろうし、拉致の実行犯であるなら言わずもがなである。
北朝鮮は第一回日朝首脳会談の席で特殊機関の一部が妄動主義・英雄主義に走
って日本人を拉致した事実を認めており、正に辛容疑者がこの「事実」にあた
る生きた証人なのだ。中学1年生の少女を拉致し、彼女が未だに祖国に戻って
こられない現実に、ただただ時間の惨さを感じざるを得ない。そして拉致を実
行した辛容疑者がのうのうと北朝鮮暮らしていると思うと、怒りがこみあげて
くるばかりである。

 

この辛光洙容疑者を含めた「在日韓国人政治犯の釈放に関する要望」なるもの
が89年に韓国政府宛に出されていたことも忘れてはならない。
【私どもは貴国における最近の民主化の発展、とりわけ相当数の政治犯が自由
を享受できるようになりつつあることを多とし、さらに残された政治犯の釈放
のために貴下が一層のイニシアチブを発揮されることを期待しています。
在日関係のすべての「政治犯」とその家族が希望に満ちた報せを受け、彼らが
韓国での社会生活におけるすぐれた人材として、また日韓両国民の友好のきづ
なとして働くことができる機会を与えて下さるよう、ここに心からお願いする
ものであります。】なる文書を盧泰愚大統領に日本国国会議員一同とし、野党
議員133名が署名し送っていたのだ。

 

在日の工作員が含まれている、さらに言えば拉致の実行犯が含まれていたにも
関わらず、釈放を要望するなど失態以外の何ものでもない。一昔前の出来事で
あるとは言え、無為無策拉致被害者を放置してきた罪は重い。