「なぜ靖国神社に行くのか分からない。個人の趣味を外交に使うのはまずいん
じゃないか」と憤るのは「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの柳
井正会長兼社長。「政治が経済の足を引っ張っている」と小泉純一郎首相を厳
しく批判した。中国の工場と直接契約し、高品質の商品を低価格で販売するビ
ジネスモデルを確立した柳井会長。「政冷経熱」といわれる日中関係の現状に
危機意識は強い。「隣国として日中は抜き差しならない関係。この関係が破滅
的になれば、日本という国だってなくなる可能性がある」と語気を強めた。

 

この発言は企業人としての立場からなのか、それとも一個人としての立場なの
か。経済の足を引っ張るのが政治だと言うのなら、靖国神社の参拝以外で日中
が抱える政治的な不安は東シナ海のガス田開発であったり、今なお中国が領有
を主張する尖閣諸島の問題であったりと非常に多岐にわたっているわけである。
それらを経済のために中国と妥協して、現地での経済活動がスムーズに行くこ
とを要望するとでも言うのか。靖国神社の参拝を個人の趣味と言い切れる精神
も理解出来ないが、経済のために政治を妥協しろと注文を付けるとは呆れても
のも言えない。

 

本業のユニクロの業績は横ばいが続き、かつての倍倍ゲームとはほど遠い中で
も未だに売上高一兆円企業を掲げ、中国製衣料品を展開するファーストリテイ
リングにとって、中国とはもはや一心同体の企業と言っても過言ではない。中
国での生産が止まればそのビジネスモデルも即破綻、不安があるのはわからな
いでもないが、ユニクロの服のように国まで安く売ってもらっては困るのだ。
いや高くても売ってもらっては困る、あまりの短絡的な発想をする前に我が国
で商売をする以上、金儲けだけを考えれば良いとはいかないだろう。