外務省の塩尻孝二郎官房長は16日午前の衆院予算委員会で、2004年5月
に自殺した中国・上海の日本総領事館員について、03年11月にイラクで殺
害された奥克彦大使らと同様、殉職扱いとしていることを明らかにした。民主
党の高山智司氏への答弁。奥氏らのケースは、公務遂行中に事件に遭遇した特
別公務災害を適用。通常の1.5倍の遺族補償年金を支給している。同官房長
は「『国を売るつもりはない。死を選ぶ』と遺書に書いてあり、国のために身
を投げたと思っている」と指摘した。 

 

自ら招いたことであるとは言え、国を売ることを拒み死を選んだ行為は文字通
り国家に対しての殉職であろう。諜報機関が跋扈する中、歩く機密のような大
使館員や領事館員は外に出れば敵だらけで、特に中国のような国家であれば余
計だ。残された家族にしても、機密を守って死んだのであれば女性関係云々で
後ろ指を指さされることはないであろうが、いずれにしても悔しいはずだ。当
人が悩みに悩み、同僚にも相談出来ないまま売国奴の汚名だけは避けようとの
決断は痛いほど伝わってくる。

 

かつて、我が国の情報機関は非常に優秀であったとされるが、戦後徹底的に破
壊されてしまい、未だに統一された情報機関を持たず各々の府省庁が集め、そ
れを一元的に取り扱うことはしていない。縄張り意識があるとしても、今回の
ように外務省から官邸に中国の公安機関に追い込まれて自殺した可能性がある
との情報が伝わらなかったことに象徴されるように、一年以上も前のことを今
更中国に抗議したところで仕方ないであろうし、さらに言えば週刊誌に記事に
されてしまうこともどうであろうか。情報がだだ漏れであるならまだしも、そ
の情報を守ろうとして死を選んだ殉職者がいるのなら、まだ救いようがあるか
もしれないが。