国連のアナン事務総長は10日、小泉純一郎首相の靖国神社参拝などで冷え込
んだ日中韓3カ国の関係について「隣人を選ぶことはできない」と述べ、歴史
認識をめぐる対立の克服を要請、北朝鮮拉致問題では同国を批判し、横田め
ぐみさんら被害者の安否情報開示を求めた。事務総長が北朝鮮を名指しして拉
致問題に言及したのは異例。14日からの日中韓などアジア歴訪を前に共同通
信などアジアの主要メディア8社と国連本部で会見した。今年末で任期の切れ
る事務総長にとって、今回が最後のアジア歴訪になる見込み。国連で相次ぐス
キャンダルに見舞われる中、小泉首相や中国の胡錦濤国家主席、韓国の盧武鉉
大統領らとの会談を通じ日中韓の和解に寄与、威信回復につなげたい意向。

 

国連が機能しているかと言えば、決してそうだとは言えないのが現実だ。国連
は万能の組織ではなく、どちらかと言えば大国の意向にもろに左右されるかな
り脆弱なところを抱えている。我が国が過剰な分担金を負担しているが、常任
理事国と言う特権国は発言力の割には、大して分担金を支払っていないことに
言及し、新たな分担率算定方式導入を提案すると案の定、中露は猛烈に反対し
ている。国連改革が叫ばれる中、事務総長がそれに対してリーダーシップを発
揮出来たのか、かなりあやしいところであろう。対立が続く日中韓の調整役と
してはアナン事務総長では役不足であり、自らの威信回復に利用されては三国
ともに困ったところだ。

 

だが、国連の最大の利点は世界中のあらゆる国々が名を連ねていることではな
いか。北朝鮮とて国連には席を持っているわけで、そこで拉致問題を提起する
ことは世界に知らしめる場となりうる。事務総長の「隣人を選ぶことはできな
い」との発言も、余計なお世話ではあるが、実際のところはその通りである。
中国も韓国も我が国も別に好んで対立をしているわけではなく、そこに国と国
がある限りはぶつかり合う部分があるのは当然だ。何事もうまく行くような世
界を築けるのは、それは少なくとも現実世界ではなさそうだ。