13日付の中国共産党機関紙・人民日報などによると、同国建設省はこのほど、
景勝地での映画やテレビの撮影や大型イベントなどを原則として禁止する通知を
出した。中国では映画ロケに使われた雲南省景勝地香格里拉県に撮影用の建
築残骸や大量のごみなどが放置され、自然破壊を招いたとして批判が高まってい
た。この映画は、中国の有名な映画監督、陳凱歌氏による「無極(PROMIS
E)」。真田広之さんらアジアのスターが出演し、2004年から同県の湖のほ
とりなどで撮影が行われたが、建築残骸放置などのほか、湖畔のツツジの茂みも
破壊されたという。

 

中国にとって可及的な課題は環境対策であろう。敦煌にある砂漠に浮かぶ三日月
のような美しい湖、月牙泉が消失の危機に直面しているとの報道があったが、人
口増による砂漠化の進行や開墾により潅がい用水の増加が影響しているようだ。
この景勝地でのイベント等の使用禁止は理解できることであるし、中国が世界に
誇る万里の長城も観光用に補強された部分以外は全面的に崩壊の危機に晒されて
いるように、先人達が築き愛してきたものが圧倒的なスピードを持って破壊され
消滅しようとしているのだ。壊れたものはまた作れば良いかもしれないが、砂漠
化した自然を取り戻すのは容易なことではあるまい。

 

沿岸部の経済的発展にばかり目が行く中国であるが、その実は環境と言うアキレ
ス腱を抱えた発展途上国でもある。北部の深刻な水不足を解消しようと長江の水
黄河へともっていこうとする「南水北調」プロジェクトにせよ、そのスケール
は古代と変わらないような壮大なものである。水不足が南部にまで及べば早々に
崩壊することは目に見えてはいるが、それでもやらねばならない事情が中国には
あるのだろう。人権カードによって米国からの外圧を受ける中国にとって、環境
は内なる圧力と言えそうだ。むろん両者共に自らがもたらしたことであるのは言
うまでも無いが。