与謝野馨経済財政担当相は毎日新聞のインタビューで、靖国神社A級戦犯
祀について「皇族も政治家も遺族も何のためらいもなく慰霊に行った自然な状
況に戻せるのは靖国神社自身だ。A級戦犯分祀を含め、そのやり方は神社自
身が判断することだ」と述べ、靖国神社の自発的な分祀に期待する考えを明ら
かにした。小泉内閣の閣僚が分祀論を明確に主張したのは初めてだ。与謝野氏
靖国神社が(1)宗教法人であり国の干渉は受けない(2)国の唯一の慰霊
施設である――という「二つの主張をしている」と指摘。「二つ同時に成立さ
せるのであれば、神社自身がいろいろと考える必要がある」と述べた。

 

小泉内閣の閣僚からもいわゆるA級戦犯分祀論が出てくるのは、ポスト小泉
を巡る争いが本格化してきたことの表れであろう。小泉首相はおそらく今年も
靖国神社へ参拝することであろうし、さらに言えば総裁選の公約として打ち出
していた8月15日の参拝も十分に考えられる。中韓との関係が冷え込んでい
ると言っても、それは政府レベルの話で民間レベルでは日系企業の排斥が起き
ているわけでもなく、むしろ積極的に投資を望んでいるのが本音であろう。特
に中国とは東シナ海の権益では今後も間違いなくぶつかり合うことが予想され
先日の経済同友会の提言ではないが、またその度に譲歩しろとでも言うつもり
なのだろうか。

 

すでに靖国神社の参拝が政教分離に反する反しないのレベルで収まらず、あく
まで政治・外交そのものに絡めていこうとする我が国の一部の人間に、怒りを
憶えるばかりだ。この国のために戦い、そして斃れた英霊達を慰霊すべき立場
の後世の日本人が、それをせずに政治の道具としている。そこを改めない限り
いつまで経っても理解を得ることは難しいだろう。慰霊のための役割は靖国
社こそが果たす、それだけのことだ。