村上ファンド」を率いる村上世彰代表の証券取引法違反疑惑で、東京地検
捜部は、村上代表から事情聴取する方針を固めた模様だ。村上代表については、
05年のライブドアによるニッポン放送株買い占めを巡り、買い付け情報を事
前に知りながら同社株を売買したとされ、公開買い付けに準じる行為に関して
証取法が禁じるインサイダー取引の疑いが出ている。特捜部は証券取引等監視
委員会と連携し、村上代表らの立件へ向け、捜査を進めるとみられる。村上代
表については、ライブドアが昨年2月、ニッポン放送株の35%を時間外取引
で取得したことをめぐり、この株取得情報を公表前に得て同株を売買した疑い
を持たれている。

 

ついに司直の手が入ることとなった「村上ファンド」。国内ファンドとしては
有数の規模に成長した村上ファンドも、メディアを騒がせるたびに反感を買い
ライブドアの堀江元社長が逮捕された後は、村上氏も危ういのではとの予想も
あったが、強制捜査となればファンド運営どころではないだろう。現に大量保
有報告書で村上ファンドの5%以上の保有が確認されている21銘柄のうち繊
維会社のダイドーリミテッドを除く20銘柄が下落し、株式市場を混乱させて
いる。一時は村上銘柄の株は上昇すると言うパターンで、高値で売り抜けてき
たが、村上ファンドとしての「神話」はここに崩壊したわけだ。

 

阪神電鉄株で思わぬ長期戦を強いられた村上氏にとって、阪神タイガースの上
場をぶち上げるなど阪神ファンを敵に回し、その手法に疑問の目が向けられて
いたのも事実である。通産官僚時代に自らM&Aに関する法整備に携わっただ
けあって、法の抜け穴をうまく突き立ち回ってきた。ファンドマネージャー
して資金を引き受けた以上は還元をしなければならない、企業価値の向上を求
める「モノ言う株主」と、それが両立しないことは明らかであった。ひとまず
今後の捜査に注目したい。