横田めぐみさんの夫で韓国人拉致被害者の金英男さんは29日午後、北朝
鮮の金剛山で記者会見し、めぐみさんについて「うつ病になり1994年
4月に病院で自殺した」と述べ「幼い時の事故で脳に損傷を受けた記憶が
ある、とめぐみが話していた」と説明した。自らが北朝鮮に渡った経緯に
ついては「海で北の船に救助され、北に渡った」と述べ、北朝鮮による拉
致を否定。北朝鮮では「特殊部門、具体的には統一部門の仕事をしている」
と明らかにした。英男さんの発言はほぼ、これまでの北朝鮮の主張に沿っ
た内容で、北朝鮮として拉致問題で韓国世論を巻き込み、幕引きを図る狙
いがあるとみられる。

 

ここまで想定通りの言葉が出てくるのも、何とも北朝鮮らしいと言えばら
しいのかもしれない。我が国にとって拉致問題の象徴的存在であっためぐ
みさんのニセ遺骨を提出してきた「前科」がある北朝鮮だけに、この程度
わけもないことであろうが、韓国側がこの結果に満足してしまうのは望ま
しいことではなく、あくまで拉致された被害者に北朝鮮で会っただけだと
言うことを認識させねばならない。再会出来たと言う拉致被害者家族の純
粋な気持ちさえ利用するのであるから、北朝鮮とは正に犯罪国家と呼ぶに
相応しいのではないか。自ら拉致を実行しておいて、韓国から家族を呼び
つけて会わせてやる姿勢には韓国側ももっと反発すべきだ。

 

金英男氏の発言を鵜呑みにすることなく、我が国はこれまで通り全ての拉
致被害者を取り戻すための毅然とした姿勢をもって、北朝鮮にあたってい
くことに変わりは無い。だが、我が国と韓国の拉致に対する温度差は如何
ともし難く、今回の再会事業でそれは決定的な差となるかもしれない。拉
致を逆手に取った北朝鮮の分断作戦は、あくまで拉致を問題視する我が国
にとっては大きな痛手となりそうだ。むろん、これには影響されずに国際
社会を味方に北朝鮮には拉致の解決を迫っていく、それしかあるまい。