耐震強度偽装事件をめぐり、マンション販売会社ヒューザー破産管財人
が、民間検査機関イーホームズと同日本ERIの2社を相手に、建築確認
で偽装を見逃したため損害を被ったとして、各1億円の損害賠償を求めた
訴訟の第1回口頭弁論が21日、東京地裁で開かれ、2社はいずれも請求
棄却を求めた。答弁書で、イーホームズは「通常の検査で偽装を見抜くこ
とは困難で、過失はない」と主張。ERIは「ヒューザー側から具体的な
事実関係の主張がない」として、事実関係の認否を留保した。ヒューザー
破産管財人は、偽装見逃しの過失があったとして、東京都など14自治
体を相手に総額約96億円の賠償を求める訴訟も起こし、自治体側も争う
姿勢を見せている。

 

耐震偽装のニュースはここ最近ではほとんど報道されなくなったが、何も
解決していないのが現状である。販売会社と検査機関・自治体とで責任の
擦り付け合いに終始し、被害者である住民やホテル側への補償は進まずに
ただ時間だけが経過していった。この訴訟もヒューザーの時間稼ぎのよう
なものであって、損害賠償が認められる可能性は限りなく少ないだろう。
耐震偽装の物件自体は、むろん検査機関がザルでなければ施行前にストッ
プがかけられており、住民が苦心して手に入れた我が家を手放す必要など
なかった。また、ビジネスホテルも雇用した従業員を解雇せざるを得ない
ような事態にも陥らなかったであろう。あまりに根が深い故に、解決が難
しいとは言え、放置しておいて良い問題ではない。

 

偽装の見逃しが罪となるのか、そもそも偽装した側の罪が建築士の逮捕だ
けで済むのか、甚だ疑問ではある。多くの「役者」が登場し、さらには一
部の政治家が便宜を図っていたりと、耐震偽装そのもの以上の暗部が垣間
見れたとも言えそうだ。逃げ切った総研などその典型例で、黒幕とまで言
われながらも司直の手をかわしきったのは、被害者達にとっては何とも歯
痒いところなのは間違いない。