埼玉県坂戸市で2001年、飲酒運転の車にはねられ死亡した大学生の遺
族が加害者の男のほか、一緒に飲酒した同僚の男性、飲酒運転を知ってい
た妻らに計約8100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁
28日、男と同僚、車所有者の元勤務先に計5800万円の支払いを命じ
た。佐久間邦夫裁判長は同僚について「男が正常に運転できない状態だっ
たことを認識していた上、運転して帰宅することも予見できた」と判断。
しかし、妻は「自宅にいて制止する現実的な方法がなかった」として賠償
責任を認めなかった。同乗者の責任を認定した例はあるが、一緒に酒を飲
んだ人に賠償を命じたのは異例という。

 

飲酒に絡む事故は悲しいことに本当に尽きないものだ。自分だけが傷付く
だけならともかく、人を巻き込み死亡させたとなれば厳罰が下って当然で
ある。同じ酒の席にいた同僚も、酔ったままの運転を止めることが出来た
と認定したのは、画期的な判決かもしれない。いずれにしても、飲食店数
軒をはしごした上で運転をするなど正気の沙汰では無い。事故は起こるべ
くして起きたのであって、偶然などではないのは確かだろう。最後に意見
を述べる機会を与えられた女子大生の家族は、「刑事責任は別としても、
飲酒運転という『殺人行為』を止めなかった周囲の人間が民事上も許され
ていいのか」と強く訴えたことも、突然娘を奪われた両親の気持ちが痛い
ほど伝わる訴えではないか。

 

社会人となれば酒の席はつきものであるが、そこから運転して帰るなど交
通手段が車しかない地方であっても、運転代行サービスくらいあるものだ
ろう。同僚の罪を問うた本裁判の判決は、飲酒運転を止めさせるためには
本人だけでなく、周囲をも巻き込まねばならないと言う現状を適応させた
と言うことに過ぎないかもしれない。飲酒運転による事故は、あくまで人
的な要因によるものである、つまり止めるのもまた人と言うことだろう。