安倍晋三官房長官は4日午前の閣議後の記者会見で、今年4月15日の靖国
神社参拝について「参拝したかしないか申し上げるつもりはない」と述べる
と同時に、首相や閣僚の私人としての参拝は「自由」との見解を改めて示し
た。一方、参拝の際に安倍氏は「内閣官房長官 安倍晋三」と記帳し、本殿
に上がって参拝していたことが新たに分かった。「ポスト小泉」の最有力候
補である安倍氏の参拝は9月の自民党総裁選で靖国神社をめぐる論議に影響
するうえ、中国、韓国の反発を呼ぶことは避けられない情勢だ。安倍氏は会
見で「すでに外交、政治問題化している以上、それをさらに拡大すべきでは
ない。行くか行かないか、行ったか行かなかったか申し上げるつもりはない。
この先どうするかも同じだ」と述べ、今回も含め、首相に就任しても参拝の
有無を明言する考えのないことを改めて強調した。

 

私人公人の区別を論じるのは置いておくが、中国・韓国の反発を呼ぶことは
避けられないとの書き方はいただけない。まるで中韓の反発が欲しいかのよ
うな報じ方は、もともと我が国の政治家が靖国神社の参拝をした、と言う事
実のみをもって中韓内政干渉に近い注文をつけてくることも、大きな問題
ではないのか。中国の首相、官房長官、外相の参拝は控えるようにと言う高
圧的なまでの物言いは、反発を生んで当然のことであろうし、それに迎合す
ることが日中友好につながるのだとは言えないだろう。アジア外交靖国
社の参拝問題がカギと言いつつも、それ以外の問題を置き去りにしてアジア
外交の回復はないのも確かだ。個別の事柄でぶつかり合うことは隣国であれ
ば当然のことであって、すべてが問題なく友好関係が築けるなどあり得ない
話ではないか。

 

絶好のタイミングをもって世に放たれた富田メモによって、天皇の政治利用
を何とも思わない政治家が跋扈し始めたことは本当に悲しいことであるが、
何よりも分祀論の後ろ盾として富田メモを掲げる恥知らずぶりには怒りを覚
える。反安倍を標榜するあまりに、何でもかんでも安倍氏と反対のことを主
張すれば良いわけではない。福田氏が反安倍勢力に担がれて、国論を2分す
ることを避けたかったとの思いも無駄になるだろう。靖国神社を政治問題化
することで得をするのは誰か、それを見極めることは自民党総裁選において
重要なポイントの一つと思われる。