自民党総裁選に21日出馬表明した麻生太郎外相は、消費税率の引き上げ
スケジュールを明示すべきではないと強調するなど、谷垣禎一財務相への
批判にむしろ重点を置いた。安倍晋三官房長官の優位が揺るがない中「2
位争い」に党内の関心が向かうのが実情だが、安倍氏との政策的な違いは
必ずしも明確でない。地域格差是正などを掲げ、どこまで独自性を発揮で
きるかが課題となる。「総務相をやったので、地方がえらく傷んでいるの
が分かる。格差を埋める努力は絶対必要だ」。麻生氏は会見で、光ファイ
バーの整備など地方への配慮を繰り返した。河野派の臨時総会でも、中馬
弘毅行革担当相が「麻生氏は地方のことを政策に掲げた。半分の票は党員、
党友なので、理解していただけると思う」と麻生氏を後押しした。

 

熾烈な二位争いと揶揄されるほど、安倍氏の優位は揺るぎ無いものとなっ
ているが、対する麻生氏、谷垣氏も独自色を出そうと必死である。出た以
上は善戦ではなく勝ちにいかねばならない、圧倒的な優位に立つ安倍氏
両氏の政策に対してきちんと耳を傾け、自らの意見を述べていく必要があ
るだろう。麻生氏にとって、二度目となる総裁選はやはり圧倒的な人気を
誇る候補がいて、路線も似ているとあっては確かに独自色は出しにくいだ
ろう。靖国神社特殊法人化を打ち出したのも、天皇陛下の御親拝を期待
しての苦肉の策であろうし、富田メモで加速したA級戦犯分祀論にケリを
つけるための手だったのは間違いない。

 

麻生氏にとって、総裁は望めなくとも安倍・麻生で政権を切り盛りしてい
くのが現実的な選択となりそうだが、アジア外交をどうしていくかで靖国
神社の参拝が嫌でも問題となってくる。政府が望む望まないにしても、一
部メディアが過剰なまでに騒ぎ立て、それが結局外交問題になる種をばら
まいているのだから仕方あるまい。