朝鮮戦争で掃海作業中に殉職した元海上保安庁職員の遺族が、靖国神社
「戦死者」として合祀するよう求めたのに対し、同神社が拒否していたこ
とが分かった。神社は遺族への回答書で、合祀範囲を「大東亜戦争まで。
朝鮮戦争は基準外」と明示した。遺族は、大阪市浪速区の会社役員、中谷
藤市さん。1950年10月、弟の坂太郎さんが米軍の極秘要請を受け、
掃海艇で北朝鮮の元山沖に出動。機雷に触れて死亡した。事故後、米軍と
海保は「瀬戸内海での作業中に殉職したことにしてほしい」と求めたとい
う。現行憲法に抵触する疑いが濃いためで、中谷さんは事故記録を照会し
たが、「記録はない」と回答された。

 

靖国神社は戦後は国家の管理を離れて一宗教法人となった以上、残念なが
ら中谷坂太郎さんは極秘任務中に殉職したとしても、合祀の選択権は靖国
神社側にある。自衛隊で訓練中の殉職者は出ても靖国神社に合祀されるこ
とが無いように、靖国神社が合祀の基準を大東亜戦争までとしたのは、敗
戦を機に大きく変化した我が国と同様に、英霊の顕彰施設であった靖国
社もまた大きく変化したために他ならない。朝鮮戦争によって我が国が非
武装を前提とした平和憲法から乖離し、この時作られた警察予備隊は後に
保安隊、自衛隊と時代を経るごとに強力になっていき、世界に誇る「軍隊」
を持つに至っている。この極秘任務が本当にあったかは定かでは無いが、
時代の谷間が生んだ隠れた「英霊」だったと言えそうだ。