ドイツのリニア事故について、上海紙・解放日報などは23日、事実関係
を短く伝えた。だが、中国共産党機関紙・人民日報は一切報じていない。
上海では、ドイツの技術を導入したリニアが商用運行されているが、中国
政府は事故をきっかけに、中国のリニア政策にも批判が飛び火することを
警戒しているようだ。中国にとってリニアは、世界初の商用運行を実現さ
せたという誇りであり、中国の科学技術発展の足掛かりでもある。上海リ
ニアはトラブルが相次ぎ、本格運行は大幅に遅れた。8月11日には火災
が発生。中国メディアは「ドイツ技術を妄信したツケ」と厳しい批判を展
開していた。

 

我が国でも長年に渡りリニアモーターカーの実験を繰り返してきたが、未
だに商用に導入される気配は無い。新幹線が高速化し、時間も短縮出来た
こともあるが、やはり商用運行に使用するにはリニアでは問題が多いとの
判断もあるのだろう。中国のようにインフラ整備と同時に導入が出来るの
は、確かにメリットの方ばかりに目がいくものの、本当に安全運行が連日
出来るのかは、躊躇すべき点ではなかったのではなかろうか。広い国土を
持つ中国にとって、リニアモーターカーを通常の鉄道のように張り巡らせ
て各地を短時間で結ぶような構想を、いずれ実現する予定であったかもし
れないが、現在のように短距離での運行ならいざ知らず、長距離となれば
多くの問題が出てくることだろう。

 

そのような問題を抱えたまま、報道を規制し政府のリニア政策の批判を一
切許さないと言う体質は、驚異的な経済成長を続けていても中身は一党独
裁国家なのだと改めて教えてくれる。そう言う意味でも我が国の新幹線の
技術を導入した台湾は賢い、最先端の技術を取り入れるのではなく安全さ
を取り入れる。時間を競うだけで安全面を置いてけぼりにしては、経済成
長を優先したあまりに公害を引き起こす、それと同じことである。少なく
とも問題点があればきちんと国民に知らせるべきではなかろうか。